

高気密・高断熱の家が注目されていることは知っていますか。中でも断熱の重要性は、人の身体に影響を与えるため、WHOでも重要視しています。
住宅ばかり注目されていますが、施設においても、断熱性の重要さを理解しておく必要があります。
コラムのポイント●断熱とは、外気温に影響されることなく、室内の気温が一定に保たれるために必要な機能のことです。
●断熱性能は、省エネ基準法も関わっており、法令上300m2以上の非住宅建築物は新築等の際、省エネ基準に適合していないものは建築確認が行われず、着工できないことになっています。
●施設の断熱性能を高めることは、空調の省エネ、建物は、夏は涼しく冬は暖かい環境を整えることができ、熱中症対策・ヒートショック対策になります。
Contents
一枚の壁によって、熱が遮断されることです。
冬であれば、外は寒くても室内は暖かく、夏であれば、外は暑くても室内は涼しい状態であることを指します。
建物であれば、壁・屋根・床・窓や扉といった開口部に断熱機能を持たせることで、役割を果たします。
「断熱」にするためには、壁・屋根・床であれば、断熱材を挟み込んだり、窓や扉であれば、二重サッシするといった方法が用いられます。
以下、2つの点があります。
■人の健康を守る
■省エネを実現する
断熱性能が高ければ、外気温の影響を受けにくくなります。
<ヒートショック対策になる>
ヒートショックと呼ばれる、冬に起こりやすい、症状ですが、 原因は室内の温度差と言われています。
温度差が大きいと、血圧の上昇を引き起こし、脳梗塞を引き起こすのです。
断熱性能が高いことにより、部屋ごとの気温差が少なくなり、体への負担が減り、健康を維持することにつながります。
<結露やカビの抑制になる>
そもそも結露は、外気温と室内気温の温度差により発生します。そして、結露はカビのもとであり、シックハウス症候群のようなアレルギー疾患を誘発することになります。
断熱性能が高ければ、結露やカビの発生を抑制することになり、健康を損なうリスクを下げることになります。
地球温暖化の影響により、エアコンの使用は推奨されています。
一方で、エアコンの電力を使うことで、CO2を発生させ、さらに温暖化へと拍車をかけてしまうことになります。
しかし、断熱性能を上げることで、エアコンを使っても効率よく稼働させることができるため、最低限の電力ですみます。
環境対策になるだけでなく、ランニングコストの削減にも力を発揮するのです。
特に高齢者福祉施設・医療施設をはじめとする入所を伴う施設では、24時間空調設備を稼働させなければなりません。
また利用者も、温度差を苦手とする方や、空調の風が直接肌に当たるのを嫌う方もいます。
もともと体力的に弱っている方が多いため、体調管理には日非常に注意しなければならないからです。
もちろん、日中のみ利用者がいる施設でも、より室内空間を快適にすること、ランニングコストを考える上で「断熱」は必要不可欠といえます。
意外と盲点になりがちなのは、学校施設です。
体育館は非常に底冷えがします。朝礼などで使用する機会は減っていますが、昨今のコロナにより、換気が徹底しながら体育を行わなければならず、さらに底冷えがしやすい環境です。
体が冷えすぎてしまうと、体調不良になりやすいですし、授業にも集中できないことになります。
よりよい教育環境を整える点において、「断熱性能を高める」ことは必要条件ではないでしょうか。
非住宅である施設は、省エネ基準を満たすことが義務化されています。
2016年4月に施工された「建築物省エネ法」では、建築物の 省エネ基準適応が着工条件となりました。住宅ばかり伝えられていますが、非住宅においても同様です。
特に非住宅建築物については一次エネルギー消費基準を満たすとことが義務化されています。
300㎡ 以上の建築物については「省エネ措置の届け出」が義務付けされています。
省エネ基準に適合していないものは建築確認が行われず、着工できないことになっているため、「断熱」は無視できないのです。
なお、建築主は、工事着手前に、省エネ性能確保計画を登録省エネ判定機関等に提出し、省エネ基準への適合性判定(省エネ判定)を受け、適合判定通知書の交付を受けなけれならず、その通知書がなければ、指定確認検査機関等の建築確認手続が行われません。
住宅では、断熱性能の度合いを数値化するために外皮性能としてUA値が使用されます。
非住宅では、 pal*(パルスター)が指標です。
以前は、palでしたが、現在は pal*(パルスター) ですので、注意しましょう。なお計算式では新PALと表記されています。
PAL*(パルスター)とは、建物(非住宅建築物)の省エネ基準に関わる新しい外皮基準の指標です。
新PAL= ペリメーターゾーンの年間熱負荷 ÷ペリメーターゾーンの床面
ペリメーターゾーン(屋内周囲空間)の年間熱負荷 をペリメーターゾーンの床面積で除した値 を指します。
なお、 外皮性能の重要性や温熱環境の確保の観点から、現行省エネ基準(H11基準)レベルの断熱性等を求められています。
住宅における省エネの地域区分と同様の地域区分です。
(地域区分においては、こちらをチェックしてください)
計算は、簡易化されたとはいえ、プロでないと正しい値が求められませんので、お任せしましょう。
ただし、確認はしましょう。
設計が行われたのちに、省エネ基準を満たしているか計算されます。基準に満たしていない場合、断熱材の追加など行わなければなりませんので、追加費用がかかる場合があります。
しかし、追加費用であったとしても、基準を満たさなければ工事の着工すらできませんので、必要経費としてお考えください。
中規模建築までであれば、木造で施設を建てることが可能です。
木造であれば、木のあたたかみを感じることができ、気持ち的にもヒヤッとしない空間をつくることができます。
利用者にとって親近感のある快適な空間を演出することができ、利用者を募集しやすいかと思います。
施設での断熱性能を考えることは、予想外かもしれません。しかし、工事の着工にも関わりますし、施設の利用者の健康を守り、ランニングコストを考える上でも重要なことです。
プロに任せなければいけない部分ではありますが、積極的にかかわることで、よりより施設づくりができることでしょう。
03-5284-7106