

マンションは、管理が大切といわれていますが、マンションや管理会社が自発的に行うことが主体で、法的にきちんと定められているわけではありませんでした。
しかし、2022年4月よりマンション管理適正評価制度がスタートし、マンション管理のあり方や管理状態を指標化しました。
マンションの購入は管理を買うとも言われていますので、マンション市場に新しい一手が加わったと言えます。
今回は、まだスタートしたばかりのマンション管理適正評価制度と同時期にスタートした管理計画認定制度の違いについてお伝えします。
コラムのポイント●マンション管理適正評価制度について分かります。
●マンション管理適正評価で評価される項目について知ることができます。
●マンション管理適正評価制度と管理計画認定制度との違いがわかります。
Contents
マンション管理適正評価制度とは、一般社団法人マンション管理業協会が、マンションの管理状態について、全国共通の評価基準を設定し、中古マンション市場の中で、評価される新しい仕組みです。
マンション管理適正評価制度では、マンションの管理状態を数値化し、わかりやすく情報開示することで、中古マンション市場を活性化させる狙いもあります。
管理の状態が数値化されることで、該当するマンションの居住者にとっても、マンションが高い資産を有していることを知ることができますし、マンションの購入を検討している方にとって、購買意欲を駆り立てることができるでしょう。
マンションの管理は、元々平成13年8月1日に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」でマンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保できるようにと定められていました。
しかし、管理に対して”努力義務”であったことから、積極的に管理を行なっていくという認識が低かったのです。
今回の2022年の改正では、管理をし評価することのメリットを際立たせています。
●1年に1回、管理状態がチェックされる
●マンションの管理状態の情報が公開される
●売り出し時にマンションの価値が向上する
●管理組合が加入する損害保険料の割引になる可能性がある
管理状態がチェックされる環境が整ったため、何に対し老朽化が進んでいるのか、どの管理ができているのか、できていないのか項目がはっきりします。
おかげで、今年は、来年はなど管理計画を立てやすくなる上、長期的に管理が行き届くようになります。
これからマンションを買おうとしている人に有益な情報を与えることができます。
管理がきちんと行われている=いい物件として認識されます。
マンションは築6年目から販売価格が下がり始め、築11年目には新築の7割から8割減の価格で販売されていることが一般的です。
しかし、管理が行き届いたいい物件として、価格の下落幅を少なくすることができると考えられています。
管理制度のインセンティブとして、保険料を割引にするという案が上がっていました。
しかし残念ながら現時点では保険料の割引に関する発表はされていません。今後の発表に期待したいところです。
管理計画認定制度も、マンション管理適正評価制度と同時期にスタートしています。
制度の内容もマンションの管理を評価するものであり、違いが分かりにくいですね。
以下違いをまとめました。
マンション管理適正評価制度 | 管理計画認定制度 | |
管轄 | マンション管理業協会 | 国(地方公共団体) |
評価の有効期間 | 1年 | 5年 |
評価項目 | 30項目 | 16項目+地域独自設定項目 |
評価する人 | マンション管理業協会の指定する講習を修了した 管理業務主任者 | 国(マンション管理センター)が指定する講習を受けたマンション管理士 |
評価項目である16項目とは、同じ項目です。マンション管理適正評価制度の方が、一つ一つ細かくチェックされることになります。
マンション管理適正評価制度の大まかな部分が掴めてきたところで、次は評価項目についてお伝えします。
16項目ではありますが、16項目をおおまかに「管理体制関係」・「組合収支会計」・「建築・設備」 ・「耐震診断関係」・「生活関連」の5のカテゴリーに大別します。
ポイント制で評価され、合計を6段階(星なしから星5つ)で表示します。
●管理者の設置
●総会の開催および議事録の作成
●管理規約の整備状況
マンションの住居者が協力して自治運営を行なっていれば、難なくクリアにすることができるでしょう。
20点満点で評価されます。
●管理費の会計の収支
●修繕積立金改憲の収支
●滞納管理費などへの対策
●修繕に関する資金計画の状況
マンション住居者から管理費を徴収するにあたってきちんと行われているかどうか、という基本的な項目もあります。しかしその上で余剰金があるのか、修繕積立金をどのように徴収し、修繕計画を上回る額が徴収されているかも項目に含まれています。
40点満点で5つのカテゴリーの中でもっとも配点が高い部分です。
●法定点検の実施
●長期修繕計画の有無
●修繕履歴の保管
法定点検は、管理会社に任せているマンションが多いのですが、法律で実施を義務づけられている点検ですので、きちんと行われていることが大切です。
法定点検の内容は、建築基準法で定めれている「特殊建築物定期調査」「建築設備定期検査」「エレベーター(昇降機)定期検査」があったり、消防法で定められている「消防用設備点検」、水道法で定められている「簡易専用水道管理状況検査」および「専用水道定期水質検査」があります。
以上の点検・検査は専門家によって行わなければいけませんが、電気事業法で定められている「自家用電気工作物定期点検」は、原則専門家ですが、屋外型の高圧受電設備が設置されている場合のみマンションは管理組合の責任で点検を行うことができます。
各点検・検査はそれぞれ期間が決まっており、バラバラですので、きちんと点検が行われているのか、点検費用はどのくらいかかっているのか明確に示されていると安心できます。
なお配点は10点です。
●耐震診断の実施の有無
●耐震診断の結果および改修計画の予定の有無
築40年以降のマンションであれば注意が必要ですが、建築確認済証の交付年月日が昭和56年6月1日以降であれば、新耐震基準を満たしていると考えられるため、問題はない項目となるでしょう。
なお配点は10点です。
●設備など異常時の緊急対応
●消防訓練の実施
●防災マニュアルなどの整備状況
マンション住居者が、災害時などきちんと対応できる環境が整っているのか評価される項目です。
配点は10点です。
基本的には、管理会社に任せていれば合計が70~89点程度(適切な管理状態である)と評価されるかと思います。
やはり項目で左右されるのは「修繕費」に関わることと考えられます。
修繕費は非常に高額になり、シニア世帯ばかりのマンションだと大きな出費に対し対応できるのか不安要素が大きくなり、いい評価を得ても、絶対評価ではないという点に注意が必要です。
マンションの中古市場は年々拡大しています。マンションはRC造であることが多く、適切なメンテナンスを行えば100年以上、建物として利用することができるため、これから購入して暮らし始めても、十分に耐えられるでしょう。
しかし管理が行き届いていないと、建物としても不安要素が増え、安心して暮らせるとは言えません。この制度がスタートしたのを機に、ぜひ管理をすることの大切さを考え、行動に移していきましょう。積極的によりよい管理を続けることで、資産であるマンションの価値も大幅に下がることなく、評価されるでしょう。
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