

今数多くある介護サービスの中で、在宅療養を中心とした介護社会が形成・確立されようとしています。また、国民の7人に1人は認知症となるのではないかと予想されており、介護サービス事業も対応していかなければなりません。
昨今では、認知症の方が利用できる共同生活介護(グループホーム)の認知度は高まっていますが、「通所」である認知症対応型通所介護に関しては、まだまだです。
そこで今回は、認知症対応型通所介護の概要やサービス内容、事業所の種類など、利用を検討している方、これから開業を目指している方にも役立つ情報をまとめました。
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認知症対応型通所介護とは、「通い」の介護サービスの一つであり、認知症の方を対象と、専門的なケアを提供します。
認知症対応型通所介護は、認知症対応の介護サービスとして、グループホーム(認知症共同生活介護)がありますが、大きく異なる点は、『通所』であることです。
利用者は、もっぱら自宅で生活をします。
なお、認知症対応型通所介護では、自宅にこもりきりの利用者の社会的孤立感の解消すること、利用者の心身機能の維持回復の狙いがあります。
同時に、家族の介護の負担を軽減できるようにと考えられています。
地域密着型サービスとは、該当する地域の住民を対象としているサービスです。
施設・事業所の規模は、小さいですが、小さいからこそ手厚いサービスが提供できると考えられています。
事業所の地域の住民票があり、認知症かつ要介護1以上の方です。
ただし、要介護ではなく、要支援と認定されている方でも認知症と診断された方であれば、利用できる可能性があります。
要支援の方が利用できる事業所は、介護予防認知症対応型通所介護も行なっている事業所ですが、認知症対応型通所介護では、「介護予防」も受け付けていることが多いです。
・食事や入浴などの日常生活上の支援
・生活機能向上のための機能訓練
・口腔機能を向上させるためのサポート
・レクレーション
認知症対応型通所介護は、事業所の建てられ方で3つのタイプがあります。
・単独型
・併設型
・共同型
事業所では、認知症対応型通所介護を専門として事業所を運営するタイプです。
民家などを改装して事業所を運営していることが多いです。
なお、 厚労省の資料によると、事業所数の約5割が単独型で運営されています。
(参考:厚労省通所介護・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護資料)
特別養護老人ホーム等に併設されている事業所のことを指します。
認知症対応型共同生活介護事業所や地域密着型特定施設、そのほか地域密着型介護老人福祉施設の食堂や共同生活室を使用して実施することを指します。
共同型においては、食堂などの部屋の一角を利用するため、事業所はありません。
認知症対応型通所介護における設備基準・人員基準をご紹介します。
●食堂:3㎡×利用定員以上の広さ
●機能訓練室:3㎡×利用定員以上の広さ
●静養室
●相談室
●事務室
●消化設備その他非常災害に際して必要な設備等
災害に際して必要な設備とは?消防法において定められており、消火器や自動火災報知設備、消防機関へ通知する火災報知設備、延面積275㎡以上の場合はスプリンクラー等の設置が義務付けられています。
設備基準には含まれていませんが、利用者の身体的状況を踏まえ、バリアフリーもしくはユニバーサルデザインを採用することが好ましいです。
人員基準は、スタッフに対して定められているものですが、認知症対応通所介護では、施設の運営の種類によって、利用者の定員に対して注意すべき点があります。
【単独・併設型】
利用定員 12名以下
【共用型】
介護保険の各サービスのいずれかについて3年以上実績を有している事業所・施設との共有であることが最低条件です。
また、共用する施設によって定員が異なります。
□地域密着型介護福祉施設等と共用の場合:1日ごと3名以下
□ユニット型地域密着型介護老人福祉施設と共用の場合:ユニットごとに入居者との合計が12人以下
【単独・併設型】
●管理者:専従かつ常勤1名(認知症対応型サービス事業管理者研修している者)
●看護・介護職員:専従かつ常勤1名+サービス提供時間に応じ1名以上
※看護職員の配置は必須ではない
●機能訓練指導員:1名以上
●生活相談員(社会福祉士など):サービス提供時間に応じ専従1名以上
【共用型】
●管理者:専従かつ常勤1名(認知症対応型サービス事業管理者研修している者)
●従業員:各施設に規定されている従業者数を満たす必要な数以上
介護サービス関連の開業では、自治体からの指定をえるために、設備基準などの要件を満たさなければなりませんが、利用者が集まる事業所でないと、安定した経営が見込ません。
だからこそ、他の競合との差別化を図るため、創意工夫が求められます。
以下の4つのポイントを意識し開業に向けた準備をぜひ進めてください。
□事業所内の空間づくり
□事業所の加算対象の整備
□レクレーションの工夫
□認知症ケアパスを把握する
認知症の方は、薬を服用することで症状が緩和されるわけではなく、これまでと変わらない環境で、ご自身ができることはご自身で行うことがよいとされています。
すなわち、事業所では、家庭的で落ち着いた環境、空間をつくること、必要な設備を整えることが肝要です。
空間づくりにおいては、認知症対応グループホームが参考になるでしょう。
介護保険では、通常の算定に加えて、プラスのサービスを提供すると、加算対象となります。
他に比べ、より手厚いサービスを提供している証明になりますので、利用者の希望を募りやすいでしょう。
例えば生活機能向上連携加算といって、通所もしくは訪問リハビリテーションの事業所と連携し、個別機能訓練計画の進捗 状況を3月ごとに1回以上評価し、必要に応じて計画・訓練内容 等の見直しを行うことなどで月に200単位加算されることになります。
利用者にとって、身体機能の維持・向上が図られたり、家族の安心もえられているとの報告がされています。
(参考:厚労省通所介護・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護資料)
多くの事業所では、レクレーションが実施されています。どんなレクレーションが行われているかによって利用者の興味・関心をえることができます。
個人または集団で時間を決めて行うレクレーション、食事中や入浴中など普段の生活の中で音楽を流したりして心地よさ感じるレクレーションもあります。
利用者の個性や好みを把握し、提供できるように準備しておきましょう。
認知症ケアパスとは、「認知症の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れ」を自治体がまとめたものです。
認知症の人やその家族が「いつ」「どこで」「どのような」医療や介護サービスが受けられるのか、 認知症の様態に応じたサービス提供の流れが示されています。
利用者が認知症ケアパスを保有しているか確認し、ない場合は、自治体の福祉部や地域包括センターなどに問い合わせするように伝えましょう。
在宅の介護家族にとって指標となり、相談がしやすい環境を整えることに繋がります。
高齢者の増加と比例して、認知症の方が増えると予想されています。だからこそ、認知症の方を対象とした施設のニーズは、今後も止まることがないでしょう。
認知症の方を利用者とする、いずれの施設・事業所も小規模施設のため、ニーズに対応するには、数が求められます。
また「通所」は、在宅を支援する事業のため、よりニーズがあると考えられますので、介護サービスの中でも安定した経営を見込めるでしょう。
開業に関しては、地域・土地の選び方から建物の新築・リフォームが不可欠ですので、ぜひ経験豊富な設計事務所にご相談ください。
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