求められる福祉施設の小規模化への対応

現在、福祉施設は大規模施設よりも、小規模、もしくは中規模施設が求められていることはご存知でしょうか。
一昔前は、施設は大規模なものであり、住宅地とは離れた場所に設立されることが多かったのですが、サービスの質の低下や、立地条件、ニーズの高さに供給が追いついていないなどの理由により、変革が求められています。

変革の一つとして掲げられていることが、福祉施設そのものの小規模化です。

今回は、なぜ小規模化が求められているのか、小規模化のメリット、実際にどんな施設が求められているのかをお伝えします。

小規模化が求められる理由

なぜ施設の小規模化が求められるのか、初めにお伝えしましょう。理由を知ることで、どんな施設を目指せばよいのか見えてくるかと思います。

●個人に合わせたサービスの提供の必要性
●在宅のニーズが増えている
●高齢者や障害者の孤立化を避けるため
●空き家を活用したいため

大規模施設の場合、大勢の方を受け入れられるメリットはありますが、どうしても機械的になってしまいます。スタッフとしても、決められた時間の中で、”こなす”しかなくなり、サービスは低下してしまうのです。

では、詳しくみていきましょう。

 

個人に合わせたサービスの提供の必要性

先ほどお伝えしたサービスの低下にも起因しますが、個人の症状はそれぞれです。
例えば、要介護5でも必要な介護は異なりますし、個人によってスタッフに求めていることがバラバラです。

さらに、介護の際は、スタッフ重視の行動になってしまい、食事一つでも時間で区切られてしまう、右から左へ流れるように機械的になりがちです。

個人のペースに合わせることで、サービスの質が向上し、利用者の満足度が増すことにつながります。

利用者個人を大切にすることが根底にあるのです。

在宅のニーズが増えている

超高齢化社会となり、元気な方が増えているのも事実ですが、施設に入所を希望した場合でも、順番待ちであったり、費用の面で入所できないことが多いですし、そもそも暮らす場所を変えたくないと思っている方が多いのです。

ですが、身体の衰えを感じる場合もあるため、通所を選んだり、訪問介護を望まれている方が年々増えています。

近年は、核家族化がすすみ、老々世帯や単身世帯が増えていますが、介護の大変さもあり、子ども世帯が面倒を見ればいいという風潮も少なくなっていることも関係しているでしょう。

 

高齢者や障害者の孤立化を避けるため

施設は施設、という考え方が根付き、施設の立地場所からも、生活圏内が異なるため、違う世界と考えられがちです。
そこで問題となっているのが、孤立してしまうことです。

さらに、老々世帯や単身世帯の増加により、他人や地域との交流が少なくなり、元気な方でも孤立してしまっています。

他人と関わることで、お互いの体調や状態を知ることができたり、万が一の場合でも、孤立を防ぐ可能性が高くなります。

まず、政府として、地域交流しやすくするためにも、住宅地に施設を建てることに力を入れています。

 

空き家を活用したいため

近年、核家族化により、空き家が増えています。
子ども世帯は、都市圏など職場に近い場所で居住を構えるようになり、住む人がいなくなっても、そのまま放置されたりすることが原因として考えられます。

稀に、建物として”使える状態”のものがあったり、誰かが管理するようになることで、空き家としての景観を損ねるリスク、防犯を高めることができるメリットがあるため、何とか活用できないかと考えられたのが、福祉施設などへの転用です。

福祉施設の小規模化のメリット

福祉施設を小規模化することで、大規模施設にはできないことが以下のことができるようになります。

■利用する人数を少なくする
■利用しやすい立地にあること
■地域交流ができること
■在宅介護のニーズに応える

利用する人数を少なくする

利用できる人数、つまり定員を少なくすると、施設を利用したいをと考える多くの人のニーズを満たしていないと考えるかもしれません。

しかし、人数を少なくすることで、スタッフは、利用者それぞれにきちんと向き合い対応することが可能になり、サービスの質を向上させることができます。

施設を利用したいと思っている方が求めているのは、自分たちのペースに合っていること、手厚くケアをしてもらいたいことです。

また人数を少なくすることで、他の利用希望者の受け入れ先として、他の施設も開業しやすくなったり、利用者の選択肢も増やせるため、メリットがあるのです。

利用しやすい立地にあること

大規模施設は、大きさゆえに生活圏とは離れた場所に建設せざるをえません。
しかし、小規模施設であれば、生活圏、アクセスのよいところに開業しやすくなります。

施設の利用希望者にとっても、近くにあるなら行こうという気持ちになりやすいです。

地域交流ができること

小規模施設は、生活圏、地域内に設立することが可能です。地域交流には、該当する地域の方のご理解とご協力が不可欠ですが、孤立化を防ぎ、人とのつながりを持ちやすくなります。

今では、デイサービスと併設して、地域のコミュニティカフェを建設する施設も年々増えています。

在宅介護のニーズに応える

入所施設も求められてはいますが、高齢者の希望は、地元・自宅で暮らしたいことです。
通所施設などができれば、就寝は自宅でできますし、必要なときだけ、通所するなど体調や希望に合わせて利用できます。

必要な施設とは小規模多機能施設や地域密着型施設

福祉施設の開業を目指す方にとって、やっと何を開業すれば、ニーズを満たし、経営が成り立つのか、見えてきたのではないでしょうか。

小規模多機能施設

小規模多機能施設とは、『通い』、『一時的な宿泊』、『訪問』すべてを1箇所の施設で対応できる施設のことです。

利用者にとって大きなメリットは、在宅を可能にし、必要なときに、必要なケアを求められることです。しかも同じスタッフにケアを依頼することができます。

同じスタッフであれば、その方の状態をよく把握できていますし、ケアをしてもらうという緊張感もほぐれます。

ただし、昨今の新型コロナの影響により、利用者とスタッフがお互いに感染しない、感染させないようにと、必要とするケアを受けられていないことも懸念されています。

十分なケア・サービスを提供できるように、どんな工夫ができるのか考えていかなければなりません。

地域密着型施設

小規模多機能施設も地域密着型に該当しますが、他の介護施設でも「地域密着型」にすることで、小規模な施設となります。

そもそも「地域密着型」は、市町村が指定した介護サービス事業所に限定されます。
事業所の選定や監督は市町村が行うことで、地域の特性を生かし、地域の事情や環境に合ったサービスにすることができます。

自治体が主体となっているため、住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、地域ぐるみで支援するしくみとなっていることが大きな魅力です。

「地域密着型」の場合、自治体・地域との連携が、しっかりなされていないといけません。
自治体・地域にとっても、介護に関し、どれだけメリットがあるかが、非常にキーポイントとなりますので、開業に向けた話し合いの際は、「連携」の大切さを念頭に置いておきましょう。

今後の福祉施設の見通し

福祉施設の小規模化により手厚いケアをしながらも、地域にどれだけ溶け込めるのかが大切です。

現在、介護のあり方として、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現することを目標とし、少しずつ形づくられています。

地域包括ケアシステムのあり方は、その地域の特性に合わせていることもありますので、地域の調査をしっかりと行なった上で、何が相応しいのかを見極めて、開業に向けて働きかけてください。

開業を考えた時点から、ぜひ建築のプロに相談してください。建築のプロは建物のことだけではありません。
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