木造建築で耐火建築物を建てる

住宅をはじめ、今木造で建物を建てることが、政府(法令)により、環境保全・林業の推進の観点から求められています。
これまで『木造』では人々のいのちを守るための安全面から『耐火建築物』を建てることは不可能と考えられていましたが、技術の革新と法令の整備により『木造で耐火建築物を建てることが可能』になりました。

今回は、『木造で耐火建築物を建てられる』ようになった背景と、『耐火建築物と認められるための法令』の紹介を中心にお伝えします。

『木造』建築の考え方の変化

現存する多くの神社からもお分かりになるとは思いますが、日本では古来より『木造』によって建物が建てられていました。しかし近代化によりビルなど高層化が進んだり、木を多く使用してしまい、森林が破壊されているという考え方から、『木造』が減り鉄造が主流です。

これまで『木造』建築では火災の際の倒壊が速い、近隣への広がりやすいという考えもあり敬遠されており、防火地域、不特定多数の方が利用する、いわゆる特殊建築物に該当する建物では、『木造』による建築は不可能と判断されていました。

建築基準法では、商業施設・学校・医療施設(入院病床のない診療所やクリニックは一部除く)では、火災時の安全性を確保するため『耐火建築物/準耐火建築物』にしなければならないルールがあります。

なお、一般住宅でも防火地域内での建築は『耐火建築物/準耐火建築物』にする必要がありますので、予め建物を建てようとする地域では、どんな建物にしなければならないのか厳格に定められていますので、各自治体に確認しましょう。

耐火建築物とは

まず、『耐火建築物』がどんな建物なのかを整理しましょう。以下の法令をご覧ください。

不特定多数の人が利用し、火災時の避難に問題が生じるような防火上、特に配慮が必要な建物であり、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が耐火構造であるものまたは耐火性能検証法等により火災が終了するまで耐えられることが確認されたもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火設備を有する建築物のことです。(引用:建築基準法2条9号の2)

つまり耐火建築物と認められるためには、主要構造部・外壁開口部において定められた「技術的基準」を満たさなければなりません。

技術的基準について

主要構造部においては細かな設定がされていますが、木材を使用する場合、「技術的基準」を満たすには、3つのルート(仕様規定・国土交通省の耐火性能検証法によるもの・高度な設計法として国土交通大臣が認めるもの)があります。

仕様規定は通常適合ルートAとされ、耐火性能検証法によるものは適合ルートB、高度な設計法は適合ルートCと呼ばれています。

また外壁開口部での耐火構造とは、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊及び延焼を防止するために必要な構造のことです。
「技術的基準」と同様に、告示で定められた例示仕様・や試験等により性能を確認した上で、国土交通大臣の認定を受けたものでなければなりませんし、耐火構造よりも緩い制限がかけられた耐火性能は、1〜3時間の加熱に対する非損傷性、遮熱性、遮炎性が確保されていることが求められます。

また石膏ボードなどの防火被覆で木材を覆う工法など、「あらわし」によらない方法で木材であっても、耐火構造とすることができます。

耐火構造とは
通常の火災が終了するまでの間、当該火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために必要とされる耐火性能を有する壁・柱・床・その他建築物の構造のこと(引用:法2条7号)

適合ルートAについて

主要構造部を耐火構造とすることとあり、政令で定めている「技術的基準(大臣が定めた構造方法もしくは大臣認定を受けた構造方式)」を満たすことです。

ただし木材を使用する場合、事務室程度天井の高さの場合の建物はほぼ該当します。
大臣認定工法では、<1.燃えどまり型><2.木質ハイブリッド型><3.メンブレン型>のいずれかを採用する必要があります。

告示の例示仕様とありますが、木材を使用する場合、該当する仕様がありませんので、上記の3つの工法のいずれかを採用することになります。

いずれの工法も、使用する柱などをただ木材のみの資材として使用するのではなく、加工して建物の資材として使用します。
例えば、<1.燃え止まり型>の1つの工法でお伝えすると、中心材にスギの集合材を使い、周りを合板やせっこうなどで固め、さらに表面をスギの集合材で囲うように加工します。

適合ルートBについて

屋内において、発生が予測される火災による火熱や周囲において発生する通常の火災による火熱に火災の終了まで耐えるかどうか、耐火性能検証法によって定められている算出方法で確かめられます。

算出の際は、平成12年建告第1433号で定められた耐火性能認定法により主要構造部の非損傷性、遮燃性、遮炎性を確かめます。

木材を使用する場合、①柱・はりの小径20cm以上であること、②開放性の高い空間で火災温度が低いこと、③木造部分が使えるのは床面からの高さが5.55cm以上といった決まりがありますが、室面積および天井の高さが必要なことに留意してください。

主に、天井の高いドームや体育館で採用される適合ルートです。建築確認申請の際、必要な期間は最長70日であり、適合ルートCよりも短期間で申請できるメリットがあります。

適合ルートCについて

国土交通省が指定した性能評価期間が高度かつ専門的な知識で性能を確かめます。

木材を使用する場合、準耐火構造で燃えしろ設計でする場合と比較すると、燃えしろを不要とすることで部材寸法を細かくしたり、ボルトを露出させることが可能です。
こちらも適合ルートBと同様に、室面積および天井の高さが必要なことに留意してください。

天井の高いドームや体育館で採用されるのは適合ルートBの場合と同じですが、予め性能評価機関による審査を受け、大臣認定の申請も行う必要があったり、建築確認申請の期間が長いのがデメリットです。
なお、性能評価機関に手数料を支払う必要もありますし、設計士の高度な工学的知識も求められますが、設計の自由度が適合ルートBよりもありますので、デザイン性を重要視する場合にはおすすめです。

耐火建築物としなけれなならない建物とは

これから建てようとする建物がどんな建物なのか知っておくことも大切です。主要構造部においては特に注意が必要で、建物の<用途>、<規模>、<立地>の3つに配慮しなければなりません。地域・自治体により、同じ使用目的の建物でも『耐火建築物』としなければならない場合、『準耐火建築物』でも認められる場合、どちらにも該当しなくてもよい場合とありますので、ご留意ください。

主要構造部での<用途>による耐火建築物

建物を建てる際には、どのような使用目的<用途>で建物を建てるのか申請しなければなりません。
以下の表では建物の<用途>による区分けを表しています。

なお準耐火建築物でも認められる場合のものも合わせて紹介します。
また「用途」は法令に準拠した表記をしていますが、一部割愛したりまとめ掲載していますので予めご了承ください。

用途 耐火建築物 準耐火建築物
階による区分け 床面積合計 床面積合計
劇場・映画館など 3階以上の階または主階が1階にない場合 客室床面積200㎡以上(屋外観覧席の場合1,000㎡以上)
観覧場・公会堂・集会場 3階以上の階
病院・診療所・ホテル・共同住宅・寄宿舎など宿泊を伴う施設 3階以上の階 2階部分に病室があり、2階部分の床面積合計300㎡以上(※下記参照)
学校・体育館など公共施設 3階以上の階  2,000㎡以上
百貨店・マーケットなど商業施設・飲食店 3階以上の階 3,000㎡以上  2階部分の床面積合計500㎡以上
倉庫 200㎡以上(3階以上の部分に限る) 1,500㎡以上
自動車車庫や修理場・映画スタジオなど 3階以上の階 150㎡以上

※病院・診療所では、2階部分に患者の入院病床があるものに限ります。

主要構造部での規模に応じた制限

規模によって変わる制限は、特殊建築物に限らず、特殊建築物以外の建物に関わることが多いです。
耐火構造としなければならないかは、「高さ又は軒高」及び「延べ面積」で変わります。

高さまたは軒高においては、高さ13m超または軒高9m超かどうか
延べ面積においては3,000㎡以下か超かどうかによって変わります。

注意しなければならないのは、高さまたは軒高が基準以上かつ延べ面積3,000㎡以下の場合、建物の階数により変わります。

例)
●高さまたは軒高が基準以下、延べ面積基準以下ー>耐火構造の必要はなし

●延べ面積基準以上ー>耐火建築物

●高さまたは軒高が基準以上、延べ面積基準以下かつ4階建ー>耐火構造

●高さまたは軒高が基準以上、延べ面積基準以下かつ3階建ー>準耐火構造
平屋や2階建の場合では、30分の加熱に耐えられる構造であることが求められます。

主要構造部における立地での制限

主に都市計画地域において区分けがされていますが、防火地域か準防火地域かその他(22条地域)という分け方です。

耐火構造としなればならないのは、防火地域内であれば、
●床面積に関わらず、3階建以上の建物
●平屋および2階建の場合、床面積100㎡以上の建物
です。

準防火地域内であれば、
●床面積に関わらず4階建以上の建物
●平屋・2階建・3階建に関しては、床面積1,500㎡超の場合の建物
です。

主要構造部は、建物の根幹となる部分のため、どうしても細かな基準が設けられていますが、『木造建築で耐火建築物を建てること』は決して不可能ではありません。

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