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介護施設でのスタッフ動線を考える必要性

介護施設をはじめ、福祉施設では”利用者ファースト”で設計・開所していくことが主流ですが、施設内で働く人のことを二の次にしていいわけではありません。
withコロナ社会の中で、スタッフにかかる負担は今まで以上のものとなっていますし、人員確保が難しいといわれてい世界だからこそ、働きやすい環境をつくり、より長く働き続けられる制度や環境づくりが求められています。

今回は、建物・設備面から、いかに働きやすい環境を作るのかを重点においてお伝えします。

スタッフ目線での施設のポイント

・極力通路は広めにする
・作業に対して、回遊するような間取りや物品の配置
・休憩室や更衣室を明るく、可能な限り広くする

通路は広め

介護施設において、車椅子利用者同士がすれ違ってもいいぐらいの広さをとることが考えられますが、スタッフが台車を引いたりして利用者のサポートをするため、スタッフ同士であっても、作業が1秒でも滞らないように、すれ違ってもいい広さが必要になります。

回遊するような間取りにする

住宅での設計でも、近年家事楽動線といって、家事で移動する距離を短く、かつ作業をしやすい間取りにすることを重点的に考えられるようになっています。
介護施設をはじめ、福祉施設でも家事楽動線ならぬ『仕事楽動線』を考えることが大切かと思います。

家事楽動線では、部屋同士をまたぐ移動距離を少なくすることがメインで考えられておりましたが、今はぐるぐる巡回するような家事楽動線の間取りが注目を浴びています。スタッフは家事以上に行ったり来たりを繰り返します。出入り口が一ヶ所しかないとスタッフ同士がぶつかってしまいますが、入り口がココ、出口がココというように2ヶ所あればぶつかることなく、スムーズに作業を進めていくことができます。

食事の提供一つでもやることが多い

介護施設に入所されている方は、要介護の方々です。一つ一つの動きが想像以上に困難です。
スタッフが行わなければならない手順も設けられていますので、ぜひ経営者側としても知っておいてください。

<食事介助における一般的な手順>
【食事前】
1.排泄を済ませてもらう(食事に集中してもらうため)
2.食事に集中できるようにテレビなど消し、ゆったりとした音楽をかける(入所者が緊張しないため)
3.口内を清潔にする(唾液の分泌を促し。飲み込みやすくするため)
4.嚥下体操や口腔体操をしてもらう(スムージを食事をしてもらえるようにするため)
5.安全な姿勢で座ってもらい、食事用エプロンをつけてもらう
6.献立を伝える(食事をしたいと自発的に思ってもらうため)

【食事スタート】
1.スタッフは入所者の横に座る
2.お茶やお水などで水分補給をしてもらう
3.汁物から食べてもらう
4.主食・副食・水分を交互に与える(一回の量はティースプーンに軽く一杯分くらいを目安にする)
5.焦らせず、ゆっくり食事をしてもらう(前に食べていたものをちゃんと飲み込んでいるか、きちんと確認する)
6.スタッフは食事の量を確認する(健康状態を把握する上でも大切なポイント)
7.口腔ケアをする
8.ゆっくりしてもらう(食べたものの逆流させないために、すぐに横にしない)

たった一回の食事にも関わらず、スタッフはやらなければならないことが多いことを分かっていただけたのではないでしょうか。

さらに、今の介護施設では各個人の生活スタイルに合わせて食事を提供しますので、時間がバラバラです。
スタッフが入所者一人一人にきちんと向き合えるメリットはありますが、一人のスタッフが担当する入所者は一人ではありませんから、次から次へと仕事を進めなければなりません。

作業内容に合わせた備品の配置

介助・介護サービスをする前には、スタッフは必ず手洗い・消毒を行い手袋を装着します。手洗い場における備品についても考えてみましょう。

手洗いの水洗は自動、消毒も自動が望ましいですが、手袋をつけるまで一歩も動くことなくできるように、手の届く範囲に備付けると、作業の効率化が図れます。

消毒・手袋・ゴミ袋は特に頻度の高い消耗品ですが、一ヶ所にまとめるのではなく、使う場所ごとに設置することも肝要です。
ただし、知的障害者や認知症を患っている方を受け入れる施設においては、誤飲・誤用を避けるためにも、入所者の目の届く範囲には置いておくことはできませんので、入所者に合わせた備品の設置・管理も行わなければなりません。

スタッフだけが使用する場所も快適にする

施設づくりにおいて、重点的に考えられるのは入所者がいかに快適に過ごせるかであり、家庭的な雰囲気づくりであったり、光の差し込む明るい空間にすることを考えます。

一方でスタッフだけが使用する休憩室や更衣室においては二の次であり、影に隠れてしまいます。休憩室や更衣室は、スタッフがリラックスしたり、仕事に集中する気持ちを整える場所です。
スタッフ自身がオンオフを切り替えられることで、質のよいサービスを提供できることにも繋がります。

スタッフが働きやすい環境とは、スタッフ同士の人間関係、上下関係などの風通しのよさだけではなく、自分自身で仕事のオンオフを切り替えやすい環境なのかどうかも関係があると思います。

withコロナによる負担

新型コロナウィルスが猛威をふるい、免疫力の低い高齢者にとって非常に生活がしにくい状況になっています。高齢者施設でのクラスター発生も多く、気を揉むことが多く、スタッフにかかる心身の負担はさらに大きくなっています。

建物、設備面からできることは、消毒・殺菌・換気の徹底と衛生面をいかに保てるかです。
一時期、スタッフの感染の原因は、休憩室ではなかったのかとも言われています。入所者の前では徹底していることでも、休憩する場所は盲点となったからでしょう。

休憩室は、施設の奥につくられることが多く、風通しそのものもいい場所につくられていることが少ないのです。換気の徹底といっても、窓がないこともあったでしょう。
だからこそ、スタッフのみが使う場所であったとしても、気をつけなければならないのです。

スタッフの離職率を下げる取り組みとは

介護施設系の離職率の高さは有名です。しかし、超高齢化社会である日本では、介護施設系の需要が高く、供給が追いついていない状態です。

これから介護系施設の開所を目指すには、スタッフの人員確保が一番と難関とされていますから、いかに働きやすい環境をつくれるかどうかに関係してきます。

介護職を希望する人は、「助けたい」という思いを一心に抱いていることが多いです。離職者の多くは、自分ができることの現実を知ったり、職場の人間関係であったり、サービス残業の多さに心身が疲れ切ってしまいまい、離職するパターンが多いのです。昨今の取り組みとして多いのが以下の4つです。

・ワークライフバランス
・地域連携
・託児所の設置
・スタッフのメンタルにも気をつける(話をする機会を設けるなど)

取り組みを行った結果、実際に離職者を減らしている実例もあります。

施設の開所にはノウハウが不可欠

福利厚生面の充実に関しては、施設の設計者としての立場からはお伝えすることが難しいのですが、スタッフが使用する場所にも目を向けて設備を整えたり、間取りをご提案できるのは、設計士としての立場からです。

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