バリアフリー法について

高齢者や障害者がスムーズな行動・移動ができるように街・建物内をバリアフリー化を促進する法律であるバリアフリー法は、まちづくりにも関係がありますが、福祉施設の建物の所有者に限らず、あらゆる建物の所有者とって切ることのできない法律です。

これから新築、増築、改築または用途変更、建築基準法上用途変更手続をしようとする場合、バリアフリー最低基準(建築物移動等円滑化基準)に適合させることが義務付けられたことはご存知かと思います。なお、建築基準法上用途変更手続は、確認申請が不要な場合もありますが、施設としてバリアフリー法に則らなければならないことも留意しなければなりません。

今回は、建物内で必要なバリアフリーの設備、また昨今の空き家・空きビル活用に伴う福祉施設への転用時のポイントを併せてご紹介します。

バリアフリー法が義務付けされた建築物とは

・床面積が2,000㎡以上である等一定の規模以上の特別特定建築物
・地方公共団体が条例において義務づけ対象となる特定建築物(学校など)

なお、2,000㎡未満の建築物でも多くの人が利用する建築物(特定建築物)はバリアフリー最低基準に適合させる努力(努力義務)が求められています。

<特別特定建築物について>
不特定多数の人が利用しる建築物、また主に高齢者、 障害者等が利用する建築物(病院、百貨店、ホテル、老人ホーム、美術館など)が該当します。

バリアフリー法の義務基準と誘導基準

バリアフリー法には、建物に対して義務基準と誘導基準という2つの基準が設けられています。
例えば出入口の幅は○cm以上にしなければならないといったものです。まずは、2つの違いを明確にしましょう。

義務基準とは・・バリアフリー最低基準(建築物移動等円滑化基準)に適合させること

誘導基準とは・・義務基準より高い基準(建築物移動等円滑化誘導基準)に適合させること

任意ですが、誘導基準で施設を建てると、所管行政庁の認定を受けることができ(認定申請自体も任意)、認定を受けている旨の表示が認められ、税制上の優遇や容積率の特例等の支援を受けることが可能になります。

誘導基準の認定を示すことができれば、利用者が安心して施設を利用することができますし、一企業としても、社会貢献度が高いと世間一般にも認められ信頼度も高まるメリットもあります。

基本的なバリアフリーの設備基準

設備場所と基準の一例をご紹介します。建築する施設によって、基準が異なりますので、注意してください。

設備場所 義務基準 誘導基準
出入口 80cm以上 90cm以上
廊下など 120cm以上 180cm以上
傾斜路(スロープ) ・手すり:片側
・幅:120cm以上
・手すり:両側
・幅:150cm以上
エレベーター及びその乗降ロビー ・出入口幅:80cm以上
・かごの幅:140cm以上
・昇降ロビーの広さ:150cm角以上
・出入口幅:90cm以上
・かごの幅:160cm以上
・昇降ロビーの広さ:180cm角以上
お手洗い ・車いす用トイレ:1/建物
・オストメイト:1/建物
・低リップ小便器:1/建物
・車いす用トイレ:各階に原則2%以上
・オストメイト:各階に1以上
・低リップ小便器:1/各階

上記の例でわかるように、誘導基準の方が求められる水準が非常に高くなっていますが、利用者にとってより使いやすい設備になっています。

バリアフリーはどんな人でも分かりやすく、使いやすい

設備基準を遵守することも大切ですが、どの場所においても、使う人の多様性を考えた設備にすることもポイントです。

例えば、エレベーター一つでも使う人は車椅子利用者だけを考慮するではなく、視覚障害者や聴覚障害者の利用も考え、視覚障害者誘導用ブロックの設置や音声による誘導装置する、見やすくわかりやすい案内表示も求められています。
他にも、トイレの手すりを左右両側につけることも多くの人が使いやすくなります。

多様性のあるバリアフリー

バリアフリー法において、基準をクリアにしなければなりませんが、各自治体により求められている基準が異なります。また建設する施設においても使用する人が限定されている場合、その施設を使用する人に見合う設計も変わります。

空き家からグループホームに転用する事例がありました。
そのグループホームは、元々の民家の雰囲気を壊さず、利用者が慣れ親しんだ雰囲気・空間で生活できることを強みとし、民家のため車椅子利用時の必要な廊下の幅をクリアしなければなりませんでしたが、ご自身の力で歩ける利用者が多く、また自分の力で歩けるように助ける自助力ケアとし、廊下の幅を変えない設計にしました。
他にもバリアフリー施設では欠かせない段差の解消が必要ですが、あえてその段差を残した事例もあります。

上記のように、施設としてバリアフリー法の遵守しなけばなりませんが、既存の建物の特性と利用者の力を生かすバリアフリーを成し遂げたのです。

新施設は空き家・空きビルを活用する

昨今、空き家・空きビルの数が増え、国の問題の一つとなり、既存の建物を活用するために、建築基準法も改正されました。

改正内容は、『延べ面積200㎡以内の用途変更(居住から福祉施設への転用)時に、確認申請を不要とする』ことです。これにより、空き家の9割の利用促進、福祉施設などへの手続きの簡略化がなされました。そして今、空き家・空きビル活用として、福祉施設の新設へと繋がっているのです。

事例でご紹介した空き家(民家)→グルームホームの転用のほかに、空き家(民家)から自立援助ホーム・小規模多機能拠点・デイサービス・保育サービス拠点にした実例がありますし、空き集合住宅→コミュニティカフェ・支援センターやデイサービスなど様々な福祉施設への生まれ変わっている例も見受けられます。
日本の社会は、福祉施設を充実させていくことが求められていますので、活用方法としてまさにうってつけなのです。

戸建の空き家が主に目を向けられていますが、廃校した学校施設・閉院した病院・機械工場・事務所も同様に福祉施設に転用した事例もあり、各施設の既存のものを活用した設計も可能になります。例えば、病院の場合、すでに個室を居室にし、診察室を共同の食堂スペースにしたりと、既存の間取りを最大限に活かす方法もあるのです。

活用のメリット

既存の建物があるため、一から建設するよりもコストカットできる可能性が非常に高くなります。ただし、大幅な増築や改修が必要な場合もありますので、使いたい既存の建物の状態を確認することがポイントです。

また、人の心理として「慣れ親しんだ地域・家」から離れがたいものです。見た目が民家であれば、福祉施設であっても高齢者の利用を促すことが可能になります。「施設」という独特の空間・人のみが守るのではなく、地域で見守っていくまちづくりの一旦も担うことができるようになります。

地域密着の福祉施設を

日本は高齢化社会となり、特に高齢者への施設のニーズは高まるばかりですし、自分の家から離れたくない思いに応えられます。民家の雰囲気があり、慣れ親しんだ地域を離れることもなく時を過ごせる場所が福祉施設は、高齢者にとってまさに願ったり叶ったりの場所なのです。

政府が推進する既存の建物の活用にも貢献することができますが、福祉施設などに転用する際、十人十色、様々な変化を遂げます。なぜなら、既存の建物の特性・まち・周辺の状況・建てようとする施設の特性を併せて改修を行わなければならないからです。

だからこそ、実績のある建築士・設計事務所の手を借りる必要があります。

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